2009年8月2日日曜日

George Orwell「動物農場-おとぎばなし-」

「1984年」と並ぶオーウェルの代表作です。新訳ということで手にとりました。

昨年、三鷹の森ジブリ美術館が 「動物農場」 を劇場日本初公開していました。残念ながら私は見に行くことができなかったんですが、最近、DVDも出たみたいです。ここのホームページにも、今回の訳者である川端康雄さんが詳細な説明 「冷戦下の『動物農場』」 を掲載されています。CIAの話はすごいです。こんなこともあったんですね。堤さんの 「寓話を超えてゆく人間の力」 も興味深いです。

この本が書かれた当時のイギリスはソ連と同盟を組むことでドイツと戦争を行っていたんですが、その同盟国を批判することがタブーとなっていたみたいで、何度も出版を断られた経過があるようです。実際に出版されたのが1946年。東西冷戦が立ち現れようとするころのことで、オーウェルの著作が東側批判に利用されていきます。本編とあわせて掲載されている付録「出版の自由」そして「ウクライナ語版のための序文」に詳しく書かれてあります。こちらとあわせて読むと、現在の歴史書からは消えかかっている当時の空気みたいなものが感じられます。

「動物農場」はロシア革命から1930年代までのソ連の政治体制を寓話化したものです。特にスターリンが行った大粛清や、最後に登場する豚と人間との祝杯の様子など、目を背けたくなるほど私にはグロテスクに感じさせられます。

ただ、ストーリーが昔の話とは思われないところがあります。言葉にできず、むしろ言葉を奪われ、唯々諾々と従い、おかしいと思いながら死んでいく他の動物たち。決してこうした社会にならないよう、読み継がれていってほしい本かと思います。なんと言っても史実をもとにした、かつて人間がたどってきた歴史をもとにした本ですから。

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