2009年8月2日日曜日

上野千鶴子・辻元清美「世代間連帯」

このお二人の共著、読まずにはいられません(笑)。目次をみると今の世の中で何とかしなければいけないテーマが並んでいます。仕事、住まい、家族、子ども、教育、医療、介護、年金、税金、経済、社会連帯、そして世代間連帯。今の団塊世代が社会を引退するころ、つまりあと15年から20年後、残った世代はやっていけるのか、地縁、血縁でもなく個人が連帯して社会を作っていけるのか、このあたりが鍵ではないかと私も考えます。自分が住んでいる地域のことを考えるとなおさらそんな感じがします。この本ではこの国の現状と向かうべきところを現実ベースで議論されています。私たちが陥りやすいワナを踏まえつつ、どのように合意に達し、どのような社会を作っていくか、今回の選挙を考える上でも参考になります。
  • フレキシキュリティ:雇用の柔軟性(フレキシビリティ)と雇用保障(セキュリティ)のセット
  • 同一価値労働同一賃金
  • 企業内教育訓練、企業内福利厚生の終焉
  • 年齢差別:先任者優先原則を崩す、フェアな査定評価
  • 憲法25条生存権と住まい
  • 居住の権利宣言(1996年の国連人間居住会議)
  • 公共団体やNPOが公共財としての賃貸住宅を地域にストック形成していくときがきた
  • 共有スペース(たまり場)の有無→コミュニティ形成
  • ジェンダー平等政策
  • 「父でなければできないような子育ては存在しない。子育てにはただ母性というものがあるだけだ。女の母性と男の母性と。誰がやるにしても、マザーリング(母親業)というものだけがある。男もまたマザーリングに参加するべきだ」(マーサ・ファインマン)
  • 1965年以降、貧困層の実態を性格につかむための調査を日本は行っていない。→ すべき
  • イギリスでは郵便局に生活保護や障がい者手当、児童手当などの申請用紙が置いてあって、希望する人は容姿に記入してそのまま投函 → 政府の側から貧困の実態をつかむためにアクセスしている → 地にもぐってしまい社会が不安定化
  • すべての社会保障を企業や働き方に依存しない個人単位のものにする → 個人からは所得税、企業からは所得に応じた法人税
  • 「子育て支援」から「子どもの権利の確保」へ
  • 子どもの幸せと親の願い、必ずしもイコールではない。子どもの幸せを優先。社会的合意。
  • 親の負担が重過ぎるから、子どもを所有物視する「わが子」」意識が強くなる。社会からの大切なあずかりものを、育てる楽しみを味わわせてもらっています、と親になった人たちが思う。
  • 教育を親の子どもに対する投資にするなということ
  • 教育とは自己資本を高める活動→高等教育(=大学以上)は受益者負担(=学生)、及び機会の平等の保障
  • 義務教育(=高校まで)の無償化(子どもの人権としての学ぶ権利の保障)
  • 子育てと教育と労働はセットで考える
  • 社会保障は「老いも若きも社会全体で支える」
  • 年金制度は世帯単位ではなく個人単位で制度設計する
  • 社会保障は世代を超えたすべての人のリスクの共同管理=世代間連帯
  • 生活の地域完結性。そこそこ、ぼちぼち。
  • 官は民の自発的な動きを「じゃまするな」、公共団体は市民セクターの公益事業を創業支援する役割
  • 「脱血縁、脱地縁、脱社縁」の「選択縁」。志をともにした人たち。新しい共同性をつくる

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