2009年10月10日土曜日

藤沢周平「たそがれ清兵衛」

たそがれ清兵衛
うらなり与右衛門
ごますり甚内
ど忘れ万六
だんまり弥助
かが泣き半平
日和見与次郎
祝い人助八


いずれも主人公の「あだ名」です。家中の藩士たちからそう呼ばれています。その「枕詞」には主人公の個性を反映した逸話、周囲の人が聞き及んでいる話が紹介されていますが、その実、それぞれにはそれぞれの想いや事情があります。ちなみに「祝い人」は「ほいと」と読んで「物乞い」のことだとか。

「ひとは他人の美を見たがらず、むしろ好んでその醜を見たがる」

皆、下級藩士で石高も30~100石程度。内職の日々、妻の介護、隠居、やもめ暮らし、夫と妻、家督、、さまざまな制約の中で日々をすごす武士に光をあてて描かれた各物語に、なんだか和んでしまいます。戦国武将や将軍様、明治の元勲を描く話より、身近に感じさせる主人公ばかりです。

とはいうものの、実は皆、剣の達人!藩内の熾烈な派閥抗争や、友人たちの揉め事に「死」を賭けてその力量を発揮します。

それが終わると、立身出世するわけでもなく、日常に帰っていく姿がいいです。人にはそれぞれ、日々の生活があります。

藤沢周平、じつは初めてです。「たそがれ~」の映画もまだ見てません。

読みたい本がまた増えてしまいました。

0 件のコメント: