2010年2月11日木曜日

ドイツ・フランス共通歴史教科書

EU連合の形成や東西ドイツの統一の成功要因の一つは教育かもしれない、そんなことを感じました。

先日の日中歴史共同研究委員会の報道を聞き、この本の存在を思い出し、図書館から借りてきた次第です。

2006年に独仏で出版され、2008年12月に邦訳が出ています。高校生の歴史教科書。仏独を中心におきながら世界の歴史を考察する、3年生用の現代史(1945年から現代まで)です。

300ページを超えるこの教科書には、後世に残すべき事実や資料が多数掲載されています。

それは、18世紀から20世紀半ばまで、あれほどの殺戮を繰り返してきた両国が到達した記録、といえるかもしれません。


驚いたのが掲載されている資料の内容と量。現在の日本の高等教育がどのようなものかは知りませんが、大昔に私が読んだ教科書との違いに圧倒されました。

統計資料はもちろんですが、そのほかに法律、政令、新聞や雑誌の記事、小説の引用、そして政治家や文化人・一般人の演説、インタビュー、会見発言、政党の綱領や公約までもが掲載されています。

政治における言葉の大切さを伝えてくれる内容です。

また、各章・テーマで付されている設問。その時、何が起こったのか、どのようなことがわかるのか、何を表現しているのか、賛成・反対の論拠は何か、双方の視点は何か、政治的目的は何か、比較、説明を求める設問です。

上記のような一次資料を分析し、内容を再構築し、自分の考えをまとめる訓練を繰り返しています。

本の最後では「文書」の説明、地図や統計データ、戯画の分析、論文・レポートの書き方、プロジェクトでの研究方法を掲載し、学習する上での手法を提示しています。



この教科書自体が極めて政治的な存在ですが、その向かおうとしている方向性、EU連合の中心を担うために通過しなければならない歴史の共有、そのステップに踏み出している独仏の努力は、日本でも参考になるかと思います。


子供たちにとって「教科書」が、社会に飛び出していくための「入門書」になっているのか。

このレベルを少なくとも日本の公教育で確保したいですね。高等教育の無償化と教育のレベルアップをセットで行うのが将来への有効な「投資」かと思います。

これを高校で学べるんだったら、現在の日本の「大学制度」はいらないな。そのかわりに、専門性の探求と人との出会いの場としての「学校」を、自由に選択できる「仕組み」ができたらいいですね。

2 件のコメント:

jeanvaljean さんのコメント...

はじめてコメントします。フランスで老後を過ごしている老人です。昨日フランス・ドイツ共同歴史教科書を手に入れました。ドイツ占領下のヨーロッパには18頁も割かれていました。設問もあなたが言われるように、歴史を感させ、考えさせるようになっています。今私はブログでフランスの歴史教科書を紹介しています。一度お越しください。フランスでは、授業はあまり教科書に頼らず、教師のイニシアティーブでおこなわれるそうです。むしろバカロレア受験の教科書といってよいくらいです。豊富な資料について質問が設けられています。これからもよろしく。

ルイ さんのコメント...

ブログを拝読しました。きれいな写真や、仏独の比較、とても参考になります。ここ1年ほどご無沙汰しているフランス語熱が再び出てきそうです。これからも読ませていただきます。こちらこそよろしくお願いします。