2010年2月21日日曜日

神永正博「未来思考-10年先を読む「統計力」」


「問題を考えるときの最大の罠は、問題にすべきでないことを問題にしてしまうこと、そして、問題にすべきことを問題にしないことにあるのです。」

神永さんがエピローグの最後に述べている言葉に大きくうなずきます。

身の回りのことでも仕事でも、「本当はどうなの?」という設問を避け、直面する物事に追われてばかりでいると、後々大変な目にあうことがよくあります。

でもひょっとしたら、大変な目にあっていること自体に気がついていないかもしれません。

ましてや政治や政策立案の世界で「問題」を誤ってしまうと多くの人に影響を及ぼします。それが意図されたものであれば悪質です。

この本では、現在よく言われている社会的なテーマを、さまざまな統計を紹介し、現状の理解を促し、静かにそして丁寧に読み解くことで、これから私たちが直面する社会を表現してくれています。

学ぶところが多いですね。


見たことのある統計もありましたが、私が気になった統計やテーマは
  • 世代会計による生涯を通じた受益と負担
  • 恵まれない子どもたちにおける人的資本投資の利益率
  • 大学教育での費用
  • 要保護児童生徒
  • 都市と高齢化
  • 雇用調整助成金
  • 雇用保蔵
  • 労働市場の二極化
  • 成長会計
  • GDPを上げる
「今の日本の制度では、社会全体で経済活動が沈滞すると、個人の取り分も減ってしますので、貧困者はより厳しい立場にたたされるだろう」

「GDPを上げるために必要なのは、全要素生産性をあげることであり、そのためには、これまでの仕事のやり方を変える必要があります。必要なのは、全体を貫く強靭なビジョンであり、戦略なのです。」



<目次>
プロローグ

PART1 少子化と結婚

第1章 日本の少子化、世界の少子化

なぜ子どもが減ったのか/コウノトリはどこへ/少なく産んで、しっかり育てる/なぜ子どもが減っているのか/先進国の出生率を比べてみよう/教育費と出生率の関係/少子化ヲ克服セヨ

第2章 結婚しません?

未婚が増えている/永すぎる春/子どもは何人欲しいですか/生物学的限界/結婚しない/できない理由/結婚の三大リスク/

第3章 産む自由、生まれる義務

世代会計―再配分の問題―/就学前教育の充実を!/大学が高すぎる/このざまはなんだ/子どもさえ増えればいいのか/統計的差別/

PART2 都市と高齢化

第4章 人はどのように動いているか

鳥の目でみた日本/うつりゆく三大都市圏/Tokyo/Nagoya/Osaka/北の国から2010/どこに住むか、だれと暮らすか/成熟する地方/秋田の現在、私たちの未来/都会と田舎

第5章 都会は強力な磁場である

人をひきつける力/ストロー効果/超LSI都市/Tokyo―8:00a.m./街場の理論/過去から現在/そして未来へ/列車の車窓から

第6章 都市壊滅!?

耳をすませば―地震の足音―/地震用語の基礎知識/70%は本当か/考えるヒント/ゆらぎの構造/正しく恐れよう

PART3 仕事と経済

第7章 仕事というぜいたく

社内失業/蜘蛛の糸/非正規雇用がとまらない/非正規へとつづく道/最低賃金を上げよ、さらば救われん?/「同一労働同一賃金」は正しいか/リスクを織り込む/きれいはきたない、きたないはきれい―ワークシェアリング―/

第8章 もし世界がひとつの村だったら

相対的貧困率=貧困の指標?/相対的はく奪/先進国における貧困とは?/非正規増加のミステリー/日本の政策がまずいのか/グローバル化を追い詰めろ/かつてのアメリカ/先人の心情/モノづくりは、まず安いものから/逃げ遅れる人たち/公害をひきうける「世界の工場」/失業する中国人/貧困を抜け出すチャンス/格差をもたらす共犯者/

第9章 日本は変わるのか

労働市場の二極化/これまでのビジネスモデルが通用しない時代/フランスの知識人/人口減のインパクト/成長のレシピ/日本が発展した秘訣/失われた10年の犯人/勤勉こそ美徳?/急募:戦略家/技術力をムダにするな

エピローグ

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