個体としての個人と、集団全体である社会。その二つの間に存在するさまざまな「重層社会」。この「重層社会における中間的な集団」として存在し、また、その外部及び内部への関係性が本質である「コミュニティ」
この「コミュニティ」をテーマに、都市や空間、社会システム、福祉国家、ケアなどの視点から、さまざまな課題提起がされています。
大佛次郎論壇賞受賞のニュースで手にとりました。
住宅や税制をめぐる諸課題に手をつけずに放置してきた日本が、今後の急激な人口構造の変化に耐えていけるかどうかは、この「コミュニティ」の評価、そして「外部とつながる」こと、普遍性をもった「個人」がつながりあいながら課題を共有し、創造を生み出し、政策を具現化していくことにかかっていると思います。
そうだ、つながるツールがTwitterじゃないか!
著者の他の本も読んで見たいです。
<目次>
プロローグ コミュニティへの問い
第1部 視座
都市・城壁・市民―都市とコミュニティ
コミュニティの中心―空間とコミュニティ
ローカルからの出発―グローバル化とコミュニティ
第2部 社会システム
都市計画と福祉国家―土地/公共性とコミュニティ
ストックをめぐる社会保障 ―資本主義/社会主義とコミュニティ
第3部 原理
ケアとしての科学―科学とコミュニティ
独我論を超えて
終章
地球倫理の可能性―コミュニティと現代
<メモ>
- 農村型コミュニティと都市型コミュニティー「つながり」のあり方
- カイシャと核家族ー「都市の中の農村」
- 人と人の間の孤立度が極限まで高まっている
- 人口構造という要因と地域コミュニティ:「地域」との関わりが強い人々が増加期にはいる、その入り口
- 「"身内"あるいは同じ集団に属する者の間では、過剰なほどの気遣いや同調性が強く支配する反面、集団の「外」にいる人間に対しては、無視か、潜在的な敵対関係が一般的となる」
- 「集団が内側に向かって閉じる」
- 「都市」あるいは地域の空間が「ひとつにまとまった存在」であるという意識
- 人間のコミュニティ:集団の内部的な関係性(農村型)とその外部との関係性(都市型)の両方をもつ点に核心。その両者が人間にとって本質的な重要性
- コミュニティの中心、地域コミュニティの単位、地域コミュニティづくりにおける課題・ハードル
- 福祉地理学:空間化の時代におけるミッション型コミュニティと地域コミュニティの融合
- 「福祉」を、その土地の特性や、人と人との関係性の質、コミュニティのあり方、ハード面を含む都市空間のあり方と一体のものとしてとらえ直す
- 空間化するケア
- "外部への窓"としての「コミュニティの中心」:神社・お寺、学校、商店街、自然関係、福祉・医療関連施設 → 内部と外部との動的な相互作用が、コミュニティそして人間の「創造性」ということと重なる
- 「公-共-私」→ 原理: 再分配、互酬性、交換。「ナショナル-ローカル-グローバル」、構造の歴史的変化
- 経済システムの進化と定常型社会
- 市場化→産業化→情報化→成熟化、定常化
- 物質→エネルギー→情報→時間
- 都市計画や土地所有、住宅のあり方を含む都市政策
- 社会保障や福祉国家のあり方に関する福祉政策
- 社会住宅と公有地
- 土地公有地政策:北欧、イギリス、フランス
- 土地・住宅・都市の「社会化」「公共性」が欠落しての土地所有の私的性格が強まった日本の「一周遅れ」の歴史展開
- 所得格差、それより大きな資産格差(ジニ係数:年間収入(二人世帯)0.308、貯蓄0.556、住宅・宅地資産額0.573)
- 「機会の平等」という観点からの資産面での格差是正
- ストックをめぐる社会保障
- 福祉国家の前提・基盤を揺るがす:経済活動のインセンティブを損なう「社会保障の拡大」、格差拡大が崩す「個人の自由な競争」
- 市場経済に対する「事後的な再配分」ではなく、「事前的な配分」が必要
- 定常型社会と「市場経済を超える領域」の生成 → 「時間の消費」:コミュニティや自然や公共性、スピリチュアリティといった領域に関する人間の欲求 → 賃労働時間の減:「時間の再配分」
- 「人生前半の社会保障」の強化、住宅の保障機能の強化、福祉政策と都市政策の統合、課税・財源のあり方
- 地域レベルにおいては、福祉、環境、まちづくりの領域は一体不可分
- 空間格差や社会的排除を生みにくい都市のあり方
- 持続可能な福祉都市
- 消費税と並んで、相続税、土地課税、環境税を強化 → 社会保障財源 → ストックの再分配、資源・環境制約との調和 → 分配の公正と持続可能性の両者の実現
- 二つの「社会」:物事の対応や解決が、「個々の場面での関係や調整」によってなされる社会と、「普遍的なルールないし原理・原則」によってなされる社会 → 双方のバランス
- 普遍的な原理が個人をつなぐ「通路」になる
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