2010年3月20日土曜日

宮本常一「忘れられた日本人」

明治、大正、そして昭和初期の、都市とは遠く離れた辺境の地で伝えられてきた生活・人生の記録です。

この本が世にでた1960年からさらに50年。幾世代も経た現在の人間からは想像できない生活空間があったこと、逆に言うと今現在の生活も当たり前でなくなる時代がくるかもしれないこと、そんなことを感じました。

解説に著者の自叙伝からの抜粋がありました。

「私は長い間歩きつづけてきた。そして多くの人にあい、多くのものを見てきた。(中略)その長い道程の中で考えつづけた一つは、いったい進歩というのは何であろうか。発展とは何であろうかということであった。すべてが進歩しているのであろうか。(中略)進歩に対する迷信が、退歩しつつあるものをも進歩と誤解し、時にはそれが人間だけではなく生きとし生けるものを絶滅にさえ向かわしめつつあるのではないかと思うことがある。(中略)進歩のかげに退歩しつつあるものを見定めてゆくことこそ、われわれに課せられている、もっとも重要な課題ではないかと思う」

「進歩」か否かという話はそれほど益はないかなと思います。そのときどきの合理的判断の積み重ねが今の現状であるとすれば、そもそも意図した方向は一体どこにあったのかということを思い起こさないと、道を誤るのではないかなとは思いました。


<目次>
対馬にて
村の寄りあい
名倉談義
子供をさがす
女の世間
土佐源氏
土佐寺川夜話
梶田富五郎翁
私の祖父
世間師
文字をもつ伝承者

  • 村の寄り合い。理屈をあげるのではなく、一つの事柄について自分の知っているかぎりの関係のある事例をあげて、協議し話をつけていく数百年前からのしきたり。物を議決するというよりは一種の知識の交換
  • 月夜の海
  • 時計を持たない、時間に拘束されない世界
  • 口説
  • 昔話
  • 世話焼きばっば
  • 田植え
  • 若い娘たちはよく逃げ出した
  • 釣り
  • 世間のつきあい
  • 男女の性、若衆、夜這い
  • 男女共に誰と寝てもよかった会式
  • 木挽
  • 女とねるのは風流
  • 戦争

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