先週来の「密約」報道を聞いて手に取りました。
この国はいまだ近代の民主主義国家さえも持ちえていないのかもしれません。
戦中、戦後を生きてきた著者の視線に、今を生きている私たちがこれからどれだけのことを返すことができるのか、反芻しながら読みました。
<目次>
第一部 私にとっての20世紀
第一章 いま,ここにある危機
未知のものへの関心/私にとっての二○世紀/一九九九年に起きたこと/対米従属しかし反米感情/この一○年の危機/国連決議なき空爆/日本の大勢順応主義/日本人は本当に変わったのか/情報の不均等性
第二章 戦前・戦後 その連続と断絶
人間は本性において悪魔なのではない/死刑廃止と戦争反対/人格を破壊された旧友/知的好奇心について/なし崩し的権力掌握の歴史/「近代の超克」座談会について/「国体」という言葉について/サルトルと自由について/死の切迫する状況のなかで読む/戦争中の芸術活動について/「雑種文化論」について/憲法問題を考える/はじめての南京訪問
第三章 社会主義 冷戦のかなたへ
ソ連邦の崩壊/一九世紀の社会主義思想/ソ連型官僚主義的社会主義/プラハの春/冷戦下における社会主義圏訪問/クロアチア紀行/サルトルのソヴィエト観/ペレストロイカについて/中国問題は冷戦史観では理解できない
第四章 言葉・ナショナリズム
二○世紀の負の遺産/歴史的文化的ナショナリズム/日本人は「国」という言葉を使いたがる/大和心について/本居宣長の古事記解釈/富永仲基の『翁の文』/言葉に対する誇り/文学の仕事
第二部 加藤周一,最後のメッセージ
第五章 老人と学生の未来
第六章 加藤周一・1968年を語る
- 過去の戦争について多くを語らないという暗黙の了解みたいなもの
- 過去をはっきり見ないことと、過去の容認とは密接不可分
- メンタリティと制度は相互関係
- 必然性の証明
- 日本の近代以前の名残
- 問題は知らなかったということではなくて、知ろうとしなかったこと
- 日本人は「国」という言葉を使いたがる:we the Japanese people
- 自分自身を含めて主観的世界を超える力
- ユーフェミズム(遠まわしの言い方)
- 中立主義はみんなが同じ方向に動いていくことを妨げない
- 第一歩というのは、人生における価値を考えるためには、すでに出来上がった、社会的約束事として通用しているものから、まず自らを解放すること
- 映画「永遠と一日」:一人の少年の運命はアルバニア人全体の運命と同じ
- 人間は社会的なものであって、自分自身に対する誇りというものも、たった一人の人間というのではなくて、誰かの目と関わっている。
- 伝統的な約束事、社会の価値の上下関係から自由になること:価値の転換
- 文学の特徴:必ずしも理論的水準ではなくて、感覚的直載的なある経験を通じて価値の転換を行うこと
- 原理を定めること、目の前の他者に注ぐ情熱の必要性
- Changer la vie
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