2010年12月10日金曜日

福沢諭吉「文明論之概略」

その昔、原書は読まずに岩波新書のこちらを読み進め、途中で早々と挫折したことを思い出しました。

文明論之概略を読む 上 (岩波新書 黄版 325)文明論之概略を読む 上 (岩波新書 黄版 325)
丸山 真男

岩波書店 1986-01-20
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この年になって初めてこの「文明論之概略」を手にとり、その文脈の爽快さ、面白さに一気にひきこまれてしまいました。

ある命題を示した後、それを「証さん」といっていくつものたとえ話を繰り出し、説得を試みるというスタイル。ことばによる合意、「衆議」を「習慣」とすることを説いた、現在にも通じる普遍性。

「ビジネス書」とでも言える古典です。付箋を張りすぎました。その一部をメモします。でもやっぱり原書を通読したほうが面白いですね。

文明論之概略 (岩波文庫)文明論之概略 (岩波文庫)
福沢 諭吉 松沢 弘陽

岩波書店 1962-11
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<目次>
第1章 議論の本位を定る事
第2章 西洋の文明を目的とする事
第3章 文明の本旨を論ず
第4章 一国人民の智徳を論ず
第5章 前論の続
第6章 智徳の弁
第7章 智徳の行わるべき時代と場所とを論ず
第8章 西洋文明の由来
第9章 日本文明の由来
第10章 自国の独立を論ず

  • すベて事物を詮索するには、枝末を払いてその本源に遡り、止る所の本位を求めざるべからず。
  • 人民の会議、社友の演説、道路の便利、出版の自由等、すべてこの類の事に就て識者の眼を着する由縁も、この人民の交際を助るがために、殊にこれを重んずるものなり。
  • 高遠の議論あらざれば、後進の輩をして高遠の域に至らしむべき路なし。
  • 昔年の異端妄説は今世の通論なり、昨日の奇説は今日の常談なり。
  • 人間交際に就ては、猜疑嫉妬の心深しといえども、事物の理を談ずるときには、疑を発して不審を質すの勇なし、、、、これを半開と名く。
  • 自由の気風はただ多事争論の間にありて存するものと知るべし。
  • 物ありて然る後に倫あるなり、倫ありて然る後に物を生ずるにあらず。憶断を以て先ず物の倫を説き、その倫に由て物理を害する勿れ。
  • 開闢の初より今日に至るまで、あるいはこれを試験の世の中というて可なり。
  • 事物を詮索すれば、その働の原因を求るに付き大なる便利あり。
  • 衆論は必ずしも人の数に由らず、智力の分量に由て強弱あり、人々に智力ありといえども、習慣に由てこれを結合せざれば衆論の体裁を成さず
  • 習慣久しきに至れば第二の天然と為り、識らず知らずして事を成すべし。
  • 人の智恵は夏の草木の如く一夜の間に成長するものにあらず。たといあるいは成長することあるも、習慣に由て用るにあらざれば功を成し難し。習慣の力は頗る強盛なるものにて、これを養えばその働に際限あるべからず。遂には私有保護の人心をも圧制するに足れり。
  • 利を争うは即ち理を争うことなり。
  • 習慣を変ずること大切なりというべし。
  • 知りてこれをいわざれば際限あるべからず。あるいはたまたま十に二、三の誤解あるも、なおいわざるに優れり。二、三の誤解を憚りて、七、八の智見を塞ぐの理なし。
  • 彼も一時一処なり、此も一時一処なり。到底、世の中の事に、一以てこれを貫くべき道はあるべからず。ただ時と処とに随て進むべきのみ。
  • 今日の有様にて、世の文明を進るの具は、規則を除て他に方便あることなし。
  • 故に人間の交際に於て、あるいは政府、あるいは人民、あるいは学者、あるいは官吏、その地位の如何を問わず、ただ権力を有する者あらば、たとい智力にても腕力にても、その力と名るものについては、必ず制限なかるべからず。
  • 学者もし人民同権の本旨を探て、その議論の確実なるものを得んと欲せば、これを他に求むべからず、必ず自らその身に復して、少年の時より今日に至るまで、自身当局の経験を反顧して発明することあるべし。
  • いずれにも、その局に当たらざれば、その事の真の情実は知るべからざるものなり。

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