2010年11月16日火曜日
映画「うつし世の静寂に」
川崎市宮前区初山を舞台としたドキュメンタリーです。
そこには、神や自然への祈り、土との生活、さまざまな伝統を受け継いできた生活がありました。一つ一つの場面にいろんなことを感じます。
閻魔様が祭られたお堂を掃き清める場面。
無尽講や念仏講、十三仏講で毎月、持ち回りで一軒の家に集まり、掛け軸を上座にして座り、先祖への思いを馳せ、今なお受け継いでいる家々のつながり。
寺を出発し、檀家だけでなくかつては遠くの家々を回ったという「巡り地蔵」。
家の縁側のそばに置かれた地蔵に手を合わせる子ども。
土とともに生きる生活。
谷戸に開かれた田んぼの畦、クロ付けを、鍬一本でもくもくと作り上げるお百姓。
泥田の底にいれられた竹。
人がいなくなった谷戸に訪れる静寂、蛍、蛙の声、うつし世。
100年前の神社合祀令で神社とともに移らざるを得なかった「獅子舞」。
戦争での断絶。
夜を徹しての40日間の練習。
60年前の舞手。
かつての「祈り」の場。
伝統の復活を見守る人。
100年振りに神社跡で行われた三世代による舞の奉納を終え、森を降りていく人々の表情。
ラストシーンに映し出される、人々のこの表情が素晴らしいです。
増えていく「新住民」は、土地を造成し、森を切り開き、田畑をつぶし、新しい家々、そして新しい生活を作っていきます。古いしきたりへの関心は失われます。そんな中で、その風土を受け継ぎ、その土地に生き、人生の時間をともにした人たちの、次の世代に伝えて行こうとする思いや祈りが響きます。
私も今から30数年前に田舎の「獅子舞」の舞い手でした。毎晩、神社の境内に集まり、練習用の舞台となる地面に引かれたござの上で、のちには本番用の演台の上で、鈴と軍配を持ち、笛と銅鑼の音とともに、大人2人がそれぞれ演じる獅子2匹を相手に練習したものです。夜の境内は子供心には独特な雰囲気でした。終わった後、いつもチョコのお菓子とジュースをもらっていたのを覚えています(笑)。遠く離れてしまったので私はそれを伝える役割はできませんが、たしか戦前から続いているこの獅子舞は今でも行われています。
祖父母の世代から受け継いだことを、自分たちの次の世代にどう伝えるか、そんなことを考える年になってしまったのかもしれませんね。
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